アンケート作成時にやってしまいがちな失敗とうまく作るコツ

【監修】株式会社ジオコード SEO事業 責任者
栗原 勇一

小さな子供の日常から大人のビジネス領域まで、今や”アンケート”(※調査やリサーチという表現を使うことも)は多くの人が当たり前のように扱っています。本コラムでは簡単なようで奥が深いアンケート作成について、具体例を用いながら上手に作る方法についてご紹介していきます。

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聞いてみると当たり前。でも多くの人がやりがちな致命的なミス

目的なきアンケートはアンケートにあらず

みなさんはこれまで多種多様なアンケートを作ったことがあるのではないでしょうか。たとえば、飲み会の出欠確認。これもれっきとしたアンケート調査です。

このような簡易的なアンケートの場合、無意識的に目的を理解して作られている事が多いです。そう、アンケート調査において最も大切なことは「何のためにアンケートをするのか。そのアンケートによってどのような情報を知りたいのか」ということです。

このような飲み会アンケートの場合、主な質問と目的は以下2点だと思います。
・(質問)名前
 (目的)主役(または上席)の人が参加できることを確認
・(質問)日付ごとの参加可否
 (目的)イベントの最大化かつ場所と予算の把握
※もちろん飲み会の類によっては別の目的を把握する必要もあります)

なので、幹事の方は上記の目的情報を収集するためにアンケートの質問項目を作っているのではないでしょうか。アンケートなんだから当たり前でしょ。
という感じですね。

しかし、少しアンケートが複雑になったり高度化すると一瞬にして、上記の前提条件が破綻していることが多々あります。ビジネスシーンにおけるアンケートとはどんなものでしょうか。

<以下一例>
 ・顧客満足度アンケート
 ・来店顧客ヒアリングアンケート
 ・市場規模実態把握調査
 ・認知度調査
  …etc.

では「顧客満足度アンケート」から分かりやすい例を挙げてみましょう。
みなさんならこのアンケートにいくつの質問を設けますか?
3つの方もいれば10個以上の方もいるのではないでしょうか。
それはすべて正解かもしれないし、間違いかもしれない。ということです。

なんで?と思う方もいるかと思います。その答えは何度も言っているアレだからです。そう、アンケートをする人によって「知りたい目的の幅と深さが異なるから」に尽きるのです。

アンケート作成のコツはアンケートをすぐ作らないこと

アンケートをすればかならず、アンケート結果が集まります。
それらを集計するとどんな結果になるのか。知りたい情報を集めるにはどんなアンケートにすればいいのか。それを考えることがアンケート作成において最も重要かつ一番初めに行うことなのです。

項目は目的から逆算で

同じ質問でも聞き方は無限大

どんな質問項目を作ればいいのか。については先ほどの通りです。ここでは各質問ごとの聞き方についてご説明しようと思います。

皆さんはこれまで何十回も何百回もアンケートに回答してきていると思います。
そのアンケートではどんな回答の仕方をしてきたかパッと思いつくでしょうか?
代表的なものは以下です。

  1. 単一回答(SA:Single Answerの略)
    →選択肢(一覧・プルダウンなど表示方法は様々)から一つを選ぶ方法
    (例)性別・居住都道府県・段階評価 など
  2. 複数回答(MA:Malti Answerの略)
    →選択肢から該当するものをすべて選ぶ方法
    ※入力個数制限をかけるケースもあり
    (例)得意科目・読んでいる雑誌・病歴 など
  3. 自由記述(FA:Free Answerの略)
    →選択肢を用意せず、回答者が自由にテキストを入力・記述する方法
    (例)名前・住所・メールアドレス・(別の回答の)選択理由 など
  4. マトリクス型SA・MA
    →表組になった選択肢を行または列ごとに単一もしくは複数回答する方法
    (例)異なる質問だが回答選択肢が同一になる場合。
       ※性格診断における5段階評価など)

結論から言うと、すべてのアンケートは③の方法をすべての質問に用いれば聞きたいことはすべて聴取することができますよね。では、なぜわざわざ回答の形式を分けるのか考えたことはありますか?

勘の良い方はお気づきかと思います。「出てくるデータが違う」のです。
つまり集計の仕方が変わってきます。自由記述はそのままでは数的に集計することができません。なので、様々な質問形式を組み合わせて目的のデータを導く設計が必要なんですね。
※紙の調査がインターネット調査に変わったのもこのような背景があります。

5段階評価、NPSに用いられる10段階評価などのようなスケール設問と呼ばれる質問には皆さん一度は回答したことがあると思います。なぜ3段階なのか、5段階なのか?と考えたことはありますか?
くどいようですが、これも同じ。それも欲しい目的と出てくるデータから設計されているのです。

また、スケール設問については「日本人の特性」というものが加味されています。例えば「好きか嫌いかを3段階で」「自分を3段階評価で」という質問があった場合。

 日本人→真ん中の「2」をつけがち
 欧米人→極端な「1」か「3」をつけがち

という傾向があります。これは日本人が欧米人に比べて「内向的」で「謙虚」であるという国民性がアンケート結果に表れてしまっているということに他なりません。(※特に記名回答の場合、その傾向がより顕著に現れます)

すなわち日本人に対して、3段階評価の設問を作った場合、かなり広い範囲の人が「2」と回答してしまうため、意味のない回答結果になってしまうのです。
(※もちろん3段階評価がベストという質問もあります。)

そういった、回答者の気持ちも考慮した選択肢設計にすることも非常に重要だと言えます。

選択肢がMECEになっていないアンケートは欠陥品

選択肢を見ればアンケート作成の基本ができているかわかる

MECE(ミーシー)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これはアンケートに限らず、マーケティングではよく用いられる構造分解の際に用いられる言葉で、(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)の略語で、「モレなく、ダブりなく」という意味になります。

モレがあるとどうなるか

人によっては該当する項目がなく回答できないという状況になり、
アンケートとして成立しなくなります。

<対処法>
①明らかに選択肢の数が確定するもの
(例)性別・都道府県など
 →アンケート実施前にチェックするしかない
 
②選択肢の数が確定しないもの or 確定したとしても選択肢の数が膨大なもの
(例)好きな食べ物・よく見るWEBサイトなど
 →調査したい代表的な選択肢を列挙し、「その他(※排他設問という)」
  を用意することで、該当しない人をそちらへ誘導する。

<注意>
 列挙する選択肢が不十分な場合、多くの人が「その他」に集中してしまい、
 回答結果に意味がなくなってしまうので、適切な選択を用意するだけの事前
 準備が重要になります。

ダブりがあるとどうなるのか

SA形式の質問なのに、人によっては複数の選択肢が該当してしまい、どちらを回答すればいいのか分からず、回答者が適当にいずれかを選択してしまいます。また、そのような人が多くいた場合、データの精度が低くなってしまう。

<ダブりの代表例>
年収など連続的な数字を選択肢で分けるとき
 ~300万円 / 300~500万円 / 500~800万円 / 800~1000万円 / 1000万~

分岐点となる数値が両方の選択肢に入ってしまっていますね。
見栄えをシンプルにするために、よくやってしまいがちですが、こういう場合はしっかりと「以上」「以下」「より上」「未満」といった言葉を用いて重複を回避しましょう

まとめ

今回は「アンケート作成」をテーマに書きましたが、これらはあくまで基本のキです。今やアンケート結果はビジネス判断にも用いられる重要な位置づけです。
たかがアンケートと言って油断していると大きな問題にもなりえますので、気を付けましょう。