デザインコンセプトとは、デザインのベースとなる指針のことです。デザインコンセプトが適切に設定できていれば、デザインに統一感が生まれて、ファンの獲得やブランドイメージの向上につながるでしょう。 本記事では、デザインコンセプトとは何かを解説します。あわせて、デザインコンセプトのメリットと作成手順も紹介します。デザインコンセプト作成時に注意したいポイントも取り上げるので、デザインに関わる方はぜひ参考にしてください。 【本文】 デザインコンセプトとは まずは、デザインコンセプトの意味について解説します。さらに、デザインコンセプトに似た言葉である「テーマ」との違いも紹介します。 デザインコンセプトの意味 デザインコンセプトは、デザインの指針を意味します。コンセプト(英語:concept)とは「概念」、つまり物事に対する共通した認識を表す言葉です。従ってデザインコンセプトは、これから制作するプロダクトのデザインの方向性を示すものを指します。 デザインコンセプトとテーマの違い テーマが「お題、主題」を指す言葉であるのに対して、デザインコンセプトはテーマの表現に用いる手段と言えます。また、テーマは一つだけ設定されますが、デザインコンセプトは一つのテーマに対して複数設定されることが一般的です。 例えばテーマが「お正月」であれば、富士山や干支のイラストを使う、筆文字のフォントを使う、紅白や金色を使っておめでたい雰囲気を演出する、などのデザインコンセプトが考えられるでしょう。 デザインコンセプトのメリット デザインコンセプトを設定するメリットは、下記の4つです。 一貫性のあるデザインになる デザインの説得力が高まる 共通認識のもと制作できる 競合と差別化できる それぞれのメリットについて、次から詳しく解説します。 一貫性のあるデザインになる デザインコンセプトを設定すると、デザインに一貫性を持たせられます。言い換えると、全体的に統一感があり、矛盾や違和感のないデザインといえるでしょう。 例えば、「クリスマス」というテーマでデザインすると想定します。色に関するコンセプトを決めていなければ、赤色と緑色を組み合わせて表現する人がいれば、金色と白色を使う人もいるでしょう。その結果、部分的にはクリスマスの表現として適切であっても、全体として見る人にちぐはぐな印象を与えてしまいます。 デザインコンセプトを明確に設定するとデザインにまとまりが生まれて、プロダクトのクオリティが高まることが期待できます。 デザインの説得力が高まる コンセプトを基に一貫性のあるデザインが制作できれば、プロダクトの説得力も増します。つまり、デザインに込めたメッセージが見る人に伝わりやすくなります。 「お花見」がテーマであるにもかかわらず、デザインにもみじや雪だるまのイラストが登場していては、見る人にテーマが正しく伝わりません。桜の花びらや桜餅などの春をイメージさせるイラストを使う、といったコンセプトを設定することで、テーマが伝わるデザインになります。 また、クライアントに対する説明においてもデザインコンセプトの設定は重要です。「春をイメージさせるデザインにしました」では説得力に欠けてしまいます。一方で、「お花見をテーマにして、ピンク色を基調に華やかなデザインにしました」とデザインコンセプトを基に説明すれば、クライアントの理解も深まるでしょう。 共通認識のもとで制作できる デザインコンセプトを明確に設定していれば、デザイン制作に複数人が関わる場合でも共通認識のもとで仕事を進められます。 複数人でチームを組んでデザインを制作することは少なくありません。その際、デザインコンセプトをあらかじめ決めておくと、デザインの軸がぶれにくくなります。チーム内のコミュニケーションや、アイデアのすり合わせにかかる時間も削減できるでしょう。 また、制作したデザインをクライアントが評価する際も、デザインコンセプトが重要になります。デザインコンセプトが、デザインの良し悪しを決める基準の一つになるためです。 競合と差別化できる デザインコンセプトの設定は、競合するプロダクトとの差別化で有利に働きます。 差別化とは、他との違いを明確に打ち出してプロダクトの魅力を引き立て、価値を高めることです。同じような製品・サービスが溢れている現代だからこそ、競合他社との差別化を図り、選ばれる商品になることが重要です。 差別化によりプロダクトの個性が強まると、ブランディングにも効果が期待できます。プロダクトの強みを活かしたデザインコンセプトを設定できれば、プロダクトやブランドの価値の向上に大きく貢献できるでしょう。 デザインコンセプトの作成手順 ここからは、デザインコンセプトを作成する手順を具体的に紹介します。 プロダクトを表現するキーワードを列挙する プロダクトを表現するキーワードを、可能な限り多く書き出します。プロダクトの目的、ターゲット、特徴、強み、イメージなどさまざまな観点から考えましょう。 このプロセスで役立つのが、次の4つの手法です。 スライダー マトリクス図 マインドマップ マンダラチャート スライダーとは、対立するふたつの要素を設定し、自社のプロダクトがどちらに近いかを考える手法です。プロダクトの大まかな方向性を把握する際に役立ちます。 マトリクス図とは、縦軸と横軸を設定して自社のプロダクトがどこに位置するかを考える手法です。競合他社のプロダクトも同じ図にマッピングすると、差別化できるポイントが明らかになります。 一人でキーワードを書き出し、思考を深めたり新たな発想を生み出したりする際に役立つのが、マインドマップです。マインドマップとは、中心となるキーワードを一つ置き、そこから枝分かれするように関連する言葉やアイデアを紐付けていく考え方です。枝分かれした言葉やアイデアから、さらに関連する言葉を考えて枝分かれを繰り返しましょう。 複数人でキーワードを深堀りするなら、マンダラチャートがおすすめです。マンダラチャートとは、9×9のマス目の中心にキーワードを入れて、まわりのマスを関連する言葉で埋めていく方法です。チームで行うと多様な価値観を取り入れながら作成できるため、広い視野で考えを深められます。 キーワードからテーマを決める 書き出したキーワードを組み合わせて、プロダクトにふさわしいテーマを作ります。 プロダクトの個性や強みを強調し、ターゲットにプロダクトを使ってみたいと思わせるテーマになるよう意識しましょう。さらに、誰にでも理解できる表現を使い、端的な言葉でまとめることも大切です。 決めたテーマがプロダクトにマッチしたものであるか、ここで一度確認しておきましょう。 要素別にデザインコンセプトをまとめる テーマが決定したら、要素ごとにデザインコンセプトをまとめます。次のような要素について、コンセプトを考えていきましょう。 イメージ シンボル タイポグラフィ カラー インタラクション イメージとは、全体的な雰囲気や世界観を表します。「かわいい」「爽やか」などの抽象的な言葉以外に、より具体的な言葉でもかまいません。例えば、家電メーカーであれば洗濯機、テレビなどでもよいでしょう。 シンボルとは、デザインに使用するパーツの形のことです。例えば、デザインに直線や鋭角を用いると、「かっこいい」イメージを伝えられます。 タイポグラフィとは、フォントを指します。フォントの種類だけではなく、文字の太さや大きさ、セリフ体(端に装飾がある文字)を用いるか否かも決めておきましょう。 カラーも、細かな点まで決めることが大切です。赤色や黄色など大まかな色だけではなく、明度や彩度、サブカラーまで決めると統一感のあるデザインになります。 Web制作で重要な要素になるのが、インタラクションです。インタラクションとは「相互作用」を意味する言葉であり、ユーザーによる特定の操作に対してシステムが返す反応のことを指します。例えば、ボタンをクリックしたときにカチッと音が鳴るのは、インタラクションの一つです。 インタラクションを多用した動きのあるサイトにするか、インタラクションをシンプルにしたサイトにするかで、ユーザーが抱く印象は変わるでしょう。 プロダクトにふさわしいデザインコンセプトか確認する 要素別にまとめたコンセプトが、プロダクトに適切なものであるか確認します。プロダクトが持つメッセージを表現できているか、誰でも理解できる表現であるか、ビジュアルに落とし込める具体的な表現であるかなどを見極めていきます。 このプロセスで、プロダクトとデザインコンセプトに相違がないかを最終確認しましょう。 コンセプトシートにまとめる 決定したデザインコンセプトを、1枚のコンセプトシートにまとめましょう。コンセプトシートはイメージやシンボルなどの要素を配置し、タイポグラフィやカラーのサンプルなども掲載して、分かりやすく作成していきます。 コンセプトシートを作成すると、常にコンセプトを確認しながら作業を進められるため、制作チームのメンバー内におけるデザインの相違が生じにくくなります。また、クライアントとデザインのイメージを共有する際も、コンセプトシートが役立つでしょう。 デザインコンセプト作成時の注意点 ここからは、デザインコンセプトを作成する際の注意点を紹介します。 制限・制約を把握しておく デザインに関する制限や制約を把握しておきましょう。プロダクトの魅力が伝わるよいアイデアが浮かんだとしても、予算やスケジュールに合わないもの、技術的に難しいものであれば実現は厳しいかもしれません。 ただし、制限や制約をあまり意識し過ぎると、発想が広がりにくくなる恐れがあります。キーワードを書き出す段階では、制限や制約を設けずに考えを自由に巡らせて、後で調整していくのがよいでしょう。 意見やフィードバックを参考にする 制作メンバーやクライアントなどの意見を積極的に聞き、コンセプトやデザインに取り入れましょう。 その際、意見する側と意見をもらう側で、デザインのターゲットや目的、テーマなどの前提条件をそろえておくことが大切です。また、意見を全て受け入れてしまうと、まとまりのないコンセプトやデザインになる可能性があります。意見やフィードバックは、よりよいコンセプトを生み出すヒント程度にとらえるようにしましょう。 ブランディングとの整合性を見極める デザインコンセプトと、プロダクトやクライアント企業のブランディングに整合性が取れていることも重要なポイントです。ブランディングに沿ったデザインコンセプトであれば、プロダクトや企業の価値向上に貢献するデザインになります。 ブランディングに成功すれば自社の強みが明確になり、競合他社との差別化が図れます。さらに、一貫性のあるブランディングは顧客からの信頼が集まりやすくなり、プロダクトや企業のファンが増加して売り上げアップにつながるでしょう。 デザインと機能性の優先度を決める デザインコンセプトを決める際は、デザインと機能性の優先度を考えることも大切です。 サイト制作でデザインを優先させると、ユーザーが求める情報がどこにあるのか分かりにくくなる場合があります。また、インタラクションが過剰であればユーザーの集中力が続かず、サイトから離脱する可能性があります。ユーザーのストレス軽減のため、読み込みに時間がかかるデザインも避けましょう。 一方で、デザインをシンプルにし過ぎると、ユーザーにメッセージが十分に伝わらない恐れがあります。デザインコンセプトを決めるプロセスで、デザインと機能性のバランスも考えておきましょう。 長期的な視点を持つ トレンドの影響を受け過ぎない、長期的に通用するデザインコンセプトを設定しましょう。トレンドを強く反映したデザインは一時的に関心を集めるものの、時間の経過とともに注目度は低下します。 特に、後からデザインを変更しにくいプロダクトの場合、デザインコンセプトは慎重に考える必要があります。例えば、オフィスは何年にも渡って使用される上に、将来的にレイアウトの変更や拡張などが行われる可能性がある場所です。そのため、オフィスのデザインは、長期的な利用や設計の変更を視野に入れることが求められます。 【まとめ】 適切なデザインコンセプトを作成しよう デザインコンセプトとは、デザインの方向性を示すものです。デザインコンセプトを設定すると、デザインに一貫性が生まれてプロダクトの説得力が増し、競合との差別化にも役立ちます。デザインコンセプトを作り込んでいれば、チームメンバーで認識を共有して作業できるため、ブレのないデザインになるでしょう。 手順に沿って丁寧に作れば、デザインコンセプトを設定することは難しくありません。適切なデザインコンセプトを作成し、プロダクトの価値を高めましょう。イメージ

デザインコンセプトとは?メリットや作成手順、作成時の注意点を紹介

【監修】株式会社ジオコード Web制作事業 責任者
高松 建太郎

デザインコンセプトとは、デザインのベースとなる指針のことです。デザインコンセプトが適切に設定できていれば、デザインに統一感が生まれて、ファンの獲得やブランドイメージの向上につながるでしょう。

本記事では、デザインコンセプトとは何かを解説します。あわせて、デザインコンセプトのメリットと作成手順も紹介します。デザインコンセプト作成時に注意したいポイントも取り上げるので、デザインに関わる方はぜひ参考にしてください。

デザインコンセプトとは

まずは、デザインコンセプトの意味について解説します。さらに、デザインコンセプトに似た言葉である「テーマ」との違いも紹介します。

デザインコンセプトの意味

デザインコンセプトとは、デザインをする際の指針や基本となる骨格のことです。コンセプト(英語:concept)は直訳すると「概念」、つまり物事に対する共通した認識のことを表します。デザインコンセプトは、これから制作するプロダクトのデザインを一貫した方向性にするため、共通の認識を示すために重要です。

デザインコンセプトとテーマの違い

テーマが「お題、主題」を指す言葉であるのに対して、デザインコンセプトはテーマの表現に用いる手段といえます。また、テーマは一つだけ設定されますが、デザインコンセプトは一つのテーマに対して複数設定されることが一般的です。

例えばテーマが「お正月」であれば、富士山や干支のイラストを使う、筆文字のフォントを使う、紅白や金色を使っておめでたい雰囲気を演出する、などのデザインコンセプトが考えられるでしょう。

デザインコンセプトのメリット

デザインコンセプトを設定するメリットは、下記の4つです。

  • 一貫性のあるデザインになる
  • デザインの説得力が高まる
  • 共通認識のもと制作できる
  • 競合と差別化できる

それぞれのメリットについて、次から詳しく解説します。

一貫性のあるデザインになる

デザインコンセプトを設定すると、デザインに一貫性を持たせられます。言い換えると、全体的に統一感があり、矛盾や違和感のないデザインといえるでしょう。

例えば、「クリスマス」というテーマでデザインすると想定します。色に関するコンセプトを決めていなければ、赤色と緑色を組み合わせて表現する人がいれば、金色と白色を使う人もいるでしょう。その結果、部分的にはクリスマスの表現として適切であっても、全体として見る人にちぐはぐな印象を与えてしまいます。

デザインコンセプトを明確に設定するとデザインにまとまりが生まれて、プロダクトのクオリティが高まることが期待できます。

デザインの説得力が高まる

コンセプトを基に一貫性のあるデザインが制作できれば、プロダクトの説得力も増します。つまり、デザインに込めたメッセージが見る人に伝わりやすくなります。

「お花見」がテーマであるにもかかわらず、デザインにもみじや雪だるまのイラストが登場していては、見る人にテーマが正しく伝わりません。桜の花びらや桜餅などの春をイメージさせるイラストを使う、といったコンセプトを設定することで、テーマが伝わるデザインになります。

また、クライアントに対する説明においてもデザインコンセプトの設定は重要です。「春をイメージさせるデザインにしました」では説得力に欠けてしまいます。一方で、「お花見をテーマにして、ピンク色を基調に華やかなデザインにしました」とデザインコンセプトを基に説明すれば、クライアントの理解も深まるでしょう。

共通認識のもとで制作できる

デザインコンセプトを明確に設定していれば、デザイン制作に複数人が関わる場合でも共通認識のもとで仕事を進められます。

複数人でチームを組んでデザインを制作することは少なくありません。その際、デザインコンセプトをあらかじめ決めておくと、デザインの軸がぶれにくくなります。チーム内のコミュニケーションや、アイデアのすり合わせにかかる時間も削減できるでしょう。

また、制作したデザインをクライアントが評価する際も、デザインコンセプトが重要になります。デザインコンセプトが、デザインの良し悪しを決める基準の一つになるためです。

競合と差別化できる

デザインコンセプトの設定は、競合するプロダクトとの差別化で有利に働きます。

差別化とは、他との違いを明確に打ち出してプロダクトの魅力を引き立て、価値を高めることです。同じような製品・サービスが溢れている現代だからこそ、競合他社との差別化を図り、選ばれる商品になることが重要です。

差別化によりプロダクトの個性が強まると、ブランディングにも効果が期待できます。プロダクトの強みを活かしたデザインコンセプトを設定できれば、プロダクトやブランドの価値の向上に大きく貢献できるでしょう。

デザインコンセプトの作成手順

ここからは、デザインコンセプトを作成する手順を具体的に紹介します。

プロダクトを表現するキーワードを列挙する

プロダクトを表現するキーワードを、可能な限り多く書き出します。プロダクトの目的、ターゲット、特徴、強み、イメージなどさまざまな観点から考えましょう。

このプロセスで役立つのが、次の4つの手法です。

  • スライダー
  • マトリクス図
  • マインドマップ
  • マンダラチャート

スライダーとは、対立するふたつの要素を設定し、自社のプロダクトがどちらに近いかを考える手法です。プロダクトの大まかな方向性を把握する際に役立ちます。

マトリクス図とは、縦軸と横軸を設定して自社のプロダクトがどこに位置するかを考える手法です。競合他社のプロダクトも同じ図にマッピングすると、差別化できるポイントが明らかになります。

一人でキーワードを書き出し、思考を深めたり新たな発想を生み出したりする際に役立つのが、マインドマップです。マインドマップとは、中心となるキーワードを一つ置き、そこから枝分かれするように関連する言葉やアイデアを紐付けていく考え方です。枝分かれした言葉やアイデアから、さらに関連する言葉を考えて枝分かれを繰り返しましょう。

複数人でキーワードを深堀りするなら、マンダラチャートが有効です。マンダラチャートとは、9×9のマス目の中心にキーワードを入れて、まわりのマスを関連する言葉で埋めていく方法です。チームで行うと多様な価値観を取り入れながら作成できるため、広い視野で考えを深められます。

キーワードからテーマを決める

書き出したキーワードを組み合わせて、プロダクトにふさわしいテーマを作ります。

プロダクトの個性や強みを強調し、ターゲットにプロダクトを使ってみたいと思わせるテーマになるよう意識しましょう。さらに、誰にでも理解できる表現を使い、端的な言葉でまとめることも大切です。

決めたテーマがプロダクトにマッチしたものであるか、ここで一度確認しておきましょう。

要素別にデザインコンセプトをまとめる

テーマが決定したら、要素ごとにデザインコンセプトをまとめます。次のような要素について、コンセプトを考えていきましょう。

  • イメージ
  • シンボル
  • タイポグラフィ
  • カラー
  • インタラクション

イメージとは、全体的な雰囲気や世界観を表します。「かわいい」「爽やか」などの抽象的な言葉以外に、より具体的な言葉でもかまいません。例えば、家電メーカーであれば洗濯機、テレビなどでもよいでしょう。

シンボルとは、デザインに使用するパーツの形のことです。例えば、デザインに直線や鋭角を用いると、「かっこいい」イメージを伝えられます。

タイポグラフィとは、フォントを指します。フォントの種類だけではなく、文字の太さや大きさ、セリフ体(端に装飾がある文字)を用いるか否かも決めておきましょう。

カラーも、細かな点まで決めることが大切です。赤色や黄色など大まかな色だけではなく、明度や彩度、サブカラーまで決めると統一感のあるデザインになります。

Web制作で重要な要素になるのが、インタラクションです。インタラクションとは「相互作用」を意味する言葉であり、ユーザーによる特定の操作に対してシステムが返す反応のことを指します。例えば、ボタンをクリックしたときにカチッと音が鳴るのは、インタラクションの一つです。

インタラクションを多用した動きのあるサイトにするか、インタラクションをシンプルにしたサイトにするかで、ユーザーが抱く印象は変わるでしょう。

プロダクトにふさわしいデザインコンセプトか確認する

要素別にまとめたコンセプトが、プロダクトに適切なものであるか確認します。プロダクトが持つメッセージを表現できているか、誰でも理解できる表現であるか、ビジュアルに落とし込める具体的な表現であるかなどを見極めていきます。

このプロセスで、プロダクトとデザインコンセプトに相違がないかを最終確認しましょう。

コンセプトシートにまとめる

決定したデザインコンセプトを、1枚のコンセプトシートにまとめましょう。コンセプトシートはイメージやシンボルなどの要素を配置し、タイポグラフィやカラーのサンプルなども掲載して、分かりやすく作成していきます。

コンセプトシートを作成すると、常にコンセプトを確認しながら作業を進められるため、制作チームのメンバー内におけるデザインの相違が生じにくくなります。また、クライアントとデザインのイメージを共有する際も、コンセプトシートが役立つでしょう。

デザインコンセプト作成時の注意点

ここからは、デザインコンセプトを作成する際の注意点を紹介します。

制限・制約を把握しておく

デザインに関する制限や制約を把握しておきましょう。プロダクトの魅力が伝わるよいアイデアが浮かんだとしても、予算やスケジュールに合わないもの、技術的に難しいものであれば実現は厳しいかもしれません。

ただし、制限や制約をあまり意識し過ぎると、発想が広がりにくくなる恐れがあります。キーワードを書き出す段階では、制限や制約を設けずに考えを自由に巡らせて、後で調整していくのがよいでしょう。

意見やフィードバックを参考にする

制作メンバーやクライアントなどの意見を積極的に聞き、コンセプトやデザインに取り入れましょう。

その際、意見する側と意見をもらう側で、デザインのターゲットや目的、テーマなどの前提条件をそろえておくことが大切です。また、意見を全て受け入れてしまうと、まとまりのないコンセプトやデザインになる可能性があります。意見やフィードバックは、よりよいコンセプトを生み出すヒント程度にとらえるようにしましょう。

ブランディングとの整合性を見極める

デザインコンセプトと、プロダクトやクライアント企業のブランディングに整合性が取れていることも重要なポイントです。ブランディングに沿ったデザインコンセプトであれば、プロダクトや企業の価値向上に貢献するデザインになります。

ブランディングに成功すれば自社の強みが明確になり、競合他社との差別化が図れます。さらに、一貫性のあるブランディングは顧客からの信頼が集まりやすくなり、プロダクトや企業のファンが増加して売り上げアップにつながるでしょう。

デザインと機能性の優先度を決める

デザインコンセプトを決める際は、デザインと機能性の優先度を考えることも大切です。

サイト制作でデザインを優先させると、ユーザーが求める情報がどこにあるのか分かりにくくなる場合があります。また、インタラクションが過剰であればユーザーの集中力が続かず、サイトから離脱する可能性があります。ユーザーのストレス軽減のため、読み込みに時間がかかるデザインも避けましょう。

一方で、デザインをシンプルにし過ぎると、ユーザーにメッセージが十分に伝わらない恐れがあります。デザインコンセプトを決めるプロセスで、デザインと機能性のバランスも考えておきましょう。

長期的な視点を持つ

トレンドの影響を受け過ぎない、長期的に通用するデザインコンセプトを設定しましょう。トレンドを強く反映したデザインは一時的に関心を集めるものの、時間の経過とともに注目度は低下します。

特に、後からデザインを変更しにくいプロダクトの場合、デザインコンセプトは慎重に考える必要があります。例えば、オフィスは何年にも渡って使用される上に、将来的にレイアウトの変更や拡張などが行われる可能性がある場所です。そのため、オフィスのデザインは、長期的な利用や設計の変更を視野に入れることが求められます。

適切なデザインコンセプトを作成しよう

デザインコンセプトとは、デザインの方向性を示すものです。デザインコンセプトを設定すると、デザインに一貫性が生まれてプロダクトの説得力が増し、競合との差別化にも役立ちます。デザインコンセプトを作り込んでいれば、チームメンバーで認識を共有して作業できるため、ブレのないデザインになるでしょう。

手順に沿って丁寧に作れば、デザインコンセプトを設定することは難しくありません。適切なデザインコンセプトを作成し、プロダクトの価値を高めましょう。